今回は1変数の実数について、数列の定義から始めて、数列の収束と発散についても定義します。
最後に、収束する数列は有界である定理を証明します。
数列の定義
まずは数列を定義します。
全ての自然数\(n\)に対して数\(s_n\)が与えられたとき、これを(無限)数列といって、
$$ \{s_n\} = \{s_1, s_2, s_3, \cdots\} \tag{1}$$
のように書きます。この数列\(\{s_n\}\)の\(n\)番目の数を第\(n\)項や一般項などと呼びます。
数列の収束
先の項で定義した数列の項\(s_n\)が、十分大きな\(n\)に対して、ある数\(s\)に任意の近さで近づくとき、この数\(s\)を数列の極限といいます。
ただし、文章による定義では話がふわっとしてしまいます。「十分大きな」や「任意の近さで」などの表現を厳密に言い表す必要があります。
このことを踏まえて、改めて数列の収束を定義しましょう。
が成り立つとき、数列が\(s\)に収束するといって、
と書く。
このとき、\(\forall\)は「すべての」を、\(\exists\)は「ある~が存在して」を意味していて、量化子と呼ばれる記号です。
式(2)をを日本語で言い換えると、
\(N\)以上の自然数\(n\)において、\(s_n\)と\(s\)の差の絶対値が\(\varepsilon\)よりも小さくなる。
になります。
数列の発散
また、どんな正数\(s\)に対しても上の定義が成り立たないとき、数列\(\{s_n\}\)は発散すると言います。
特に、
が成り立つとき、数列\(\{s_n\}\)は無限大に発散すると言って、
と書く。
数列の収束と有界
ここで数列\(\{s_n\}\)が有界であるとは、
$$\exists B \forall n \ge 1 |s_n| \le B \tag{6}$$
を満たす。
式(6)は、「ある数\(B\)が存在して、すべての自然数\(n\)に対して\(s_n\)の絶対値が\(B\)以下である。」を意味しています。
証明
仮定より数列\(\{s_n\}\)は収束します。
この数列が数\(s\)に収束するとして、\(\varepsilon\)を\(1\)とおくと、すべての自然数\(m \ge N\)に対して\(|s_m – s| \le 1\)となるような自然数\(N\)が存在します。
三角不等式を利用して、
$$\begin{align} |s_m| &= |s_m – s + s| \\ &\le |s_m – s| + |s| \\ &\le 1 + |s|\end{align}$$
を得ます。第\(N\)番目以降の項はすべて\(1 + |s|\)以下であることが分かったため、
とおけば、\(|s_n| \le B\)となります。このとき、\(max \{\cdot\}\)は\(\{\cdot\}\)内の最大値を返します。
一方で、数列\(\{s_n\}\)が有界であっても、数列\(\{s_n\}\)が収束するとは限らないことを示します。
例えば以下の数列、
$$ \{a_n\} = \{0, 1, 0, 1, 0, \cdots\} \tag{7}$$
は\(B=1\)で有界であると分かりますが、収束はしませんね。
よって、数列\(\{s_n\}\)が収束することは、数列\(\{s_n\}\)が有界であるための十分条件になります。
(証明終)
もう1つ有益な定理を紹介しておきます。
証明(背理法による)
\(s >B\)を仮定します。数列\(\{s_n\}\)は\(s\)に収束することから、\(\varepsilon( := s \: – B > 0)\)が与えられたときに、
が成り立ちます。最左辺と最右辺を比較すれば\(s_n > B\)を得ますが、これは仮定に矛盾します(証明終)。