積集合(直積)の一般化から選択公理の紹介まで

積集合の一般化

\(I\)を添字域とする集合族\(A\)があるとします。

$$A = <A_i ; i \in I>$$

また、集合\(B\)を、

$$\begin{align} B &= \bigcup_{i \in I}{A_i} \\ &= \bigcup \bigl\{A_i ; i \in I\bigr\} \end{align}$$

とします。

\(I\)から\(B\)への写像\(f\)のなかで、各\(i\)に対して\(f(i) \in A_i\)となるものの全体を、集合族\(<A_i ; i \in I>\)の積集合または直積といい、\(\prod <A_i ; i \in I>\)や\(\prod_{i \in I} A_i\)などとかきます。

$$\prod_{i \in I} A_i = \Bigl\{f : I \to \bigcup_{i \in I}{A_i} ; 各iに対してf(i) \in A_i \Bigr\}$$

具体的に、\(f(i) = a_i\)、\(f = \; <a_i>_{i \in I}\)とおいて、\(I \)が自然数全部の集合\(\mathbb N\)であるとき、

$$\prod_{i \in I} A_i = \; <a_i>_{i \in I} \; = \; <a_1, \; a_2, \; a_3, \; \cdots>$$

になります。

要は、集合族\(A\)の積集合とは、各\(A_i\)から元をひとつずつ選んでできる集合の組み合わせ全部になります。

例えば、

$$\begin{align} I &= \{1, \; 2\} \\ A &= \; <A_1, \; A_2> \end{align}$$

で、

$$\begin{align} A_1 &= \{1, 3, 5\} \\ A_2 &= \{2, 4, 6\} \end{align}$$

のとき、

$$\begin{align} \prod_{i \in I} A_i = \bigl\{ &<1, 2>, <1, 4>, <1, 6>, <3, 2>, \\ &<3, 4>, <3, 6>, <5, 2>, <5, 4>, <5, 6> \bigr\} \end{align}$$

になります。\(< \; >\)のところは\(( \; )\)としても差し支えありません。

また、すべての\(i, j \in I\)に対して\(A_i = A_j\)のとき、\(\prod_{i \in I} A_i\)を\(A^I\)とかきます。

ここでひとつの問題が生じるのですが、上にあげた例の場合、添字域\(I\)は有限集合ですし各\(A_i = \emptyset\)ですから、\(\prod_{i \in I} A_i\)は空集合ではありません。ところが、\(I\)が無限集合のときも\(\prod_{i \in I} A_i \)が空集合ではいとは限りません。

そこで、空集合でないことを保証するのが選択公理になります。そういった意味でも選択公理は重要なんですね。

選択公理

公理(選択公理)

集合\(A \neq \emptyset\)の元がすべて空でない集合だとする。このとき、\(A\)から和集合\(\bigcup A\)への写像\(f\)のなかには、\(A\)のすべての元\(x\)に対して\(f(x) \in x\)となるものが存在する。

難しいことを書きましたが、要は「集合族\(A\)の各元\(A_i\)がすべて空集合でないとき、\(A\)が無限集合であっても、各\(A_i\)に含まれる元をひとつずつ取り出して新しく集合をつくることができる」というものです。

この公理によって例えば、

$$\begin{align} I &= \{1, 2, 3, \cdots \} \\ A &= <A_1, A_2, A_3, \cdots > \end{align}$$

で、

$$A_i = \{ i \}$$

のとき、各\(A_i\)から元\(i\)を取り出して、

$$C = \{ 1, 2, 3, \cdots \} $$

なる集合\(C\)を新しく作ることができるわけです。