ジアステレオマー|不斉炭素原子が複数ある場合

有機化合物の多くは立体中心を2個以上持っています。立体中心が1つあると化合物の構造は(R)と(S)の2通り存在し、立体中心が2つ3つと増えていくと取りうる構造の種類も増えるのです。

立体中心って何ですか?という方は以下の記事を参考にしてみてください。

参考:鏡像異性体(エナンチオマー)・キラルな分子

2-ブロモ-3-クロロブタン

立体中心を複数もつ化合物について、具体例をもとに考えてみましょう。ここでは2-ブロモ-3-クロロブタンを取りあげます。 絶対配置を考慮しないと以下の構造式が書けます。

2-ブロモ-3-クロロブタン

 

上の構造式にある2位と3位の炭素はいずれも立体中心です。すると2位の炭素で(R)か(S)の2通り、3位の炭素で(R)か(S)の2通りあるため2×2=4通りの立体異性体を予想することができます。実際に、フィッシャー投影式とそれに対応する破線-くさび形表記法で構造式を記述してみると、下の図のようになります。

2-ブロモ-3-クロロブタンのフィッシャー投影式

 

フィッシャー投影式の各立体中心にRまたはSをつけておきました。立体中心が複数ある場合の(R)と(S)の判別法についてですが、1つの立体中心に注目したときにそれ以外の立体中心はすべて置換基のなかに含んで考えることで見極めることが出来ます。

(2S,3R)-2-ブロモ-3-クロロブタンの決定

 

破線-くさび形表記法を見ると、上の4つの構造のうちどの2つを選んでも重なり合うことはないため立体異性体であることがわかります。

フィッシャー投影式については以下の記事を参考にしてください。

参考:フィッシャー投影式|RS絶対配置の決定

ジアステレオマー

さて、2-ブロモ-3-クロロブタンには4つの立体異性体が存在すると分かったわけですが、これら4つのうちどの2つを選んでもエナンチオマー(鏡像異性体)の関係あるわけではありません。エナンチオマーにならないときは互いにジアステレオマーであるといいます。

(2R,3R)と(2S,3S)、(2R,3S)と(2S,3R)の組み合わせはエナンチオマーですが、それ以外の組み合わせはジアステレオマーになるということです。

2-ブロモ-3-クロロブタンの4つの立体異性体

エナンチオマーと違って、ジアステレオマーは互いに物理的性質や化学的性質が異なります。したがって比旋光度の大きさも異なります。

立体異性体の数

今回は2-ブロモ-3-クロロブタンという立体中心を2つもつ分子について解説しましたが、化合物の中には3つ4つと立体中心をもつ場合もあるわけです。

立体中心が1つあるごとにRとSの2種類の立体異性体が考えられるわけですから、一般にn個の立体中心をもつ化合物は最大で2n個の立体異性体があると考えることができます。

ただし、最大でといっているので、それ未満の数になる場合があることに注意しましょう。