アルコールの工業的製法
まずメタノールはCOとH2の加圧混合物に対して、銅、酸化亜鉛、そして酸化クロムからなる触媒を利用して合成されています。
また、このとき触媒をロジウムあるいはルテニウムに変更すると、1,2-エタンジオールを得ることが出来ます。これは自動車の不凍液などに利用されています。
COとH2を主成分とする加圧混合物は合成ガスと呼ばれ、石炭や天然ガス、石油などを水蒸気によってガス化することで得られます。
エタノールは、糖類の発酵やリン酸触媒を用いたエチレンの水和反応によって合成されています。
求核置換反応によるアルコールの合成法
ここからは、実験室でのアルコールの合成法を紹介します。
SN2反応によりハロアルカンからアルコールを合成することができます。例えば、1-ブロモヘプタンに水酸化物イオンを求核剤としてSN2反応させることで、1-ヘプタノールが生成します。反応式中のHMPAは極性の強い非プロトン溶媒で、求核剤の求核性を高めています。
ただし、実際には基質のハロゲン化物自体がそもそもアルコールから合成される場合があるため、あまり現実的ではありません。
他にも、下のような立体的にかさ高い脱離基が置換した基質に水を求核剤としてSN1反応させる方法もあります。この場合、脱離基が脱離した後に水が基質炭素に求核する位置によって鏡像異性体が生じます。
2-ブロモブタンと水を反応させれば、SN1反応で2-ブタノールが生成する一方、E1反応により1-ブテンと2-ブテンも副生成物として生成します。
このように、酸素原子を反応中心とする求核剤の場合、第二級や立体障害の大きい第一級のハロゲン化物(基質)だと脱離反応が起こってしまいます。そのため、生成物のなかにアルコール以外の物質も含まれてしまいます。
そこで、より塩基性の弱い求核剤を使って置換反応を起こしやすくします。例えば、酢酸イオンを求核剤として使うと、SN2反応によりまず酢酸エステルが生成します。続いて生成した酢酸エステルに対して水酸化物イオンを加えることで加水分解を起こし、アルコールを生成します。