今回はIUPACの定める規則に従ったアルカンの命名法を解説します。
アルカン
そもそもアルカンとは有機化合物の一種で、炭素と炭素のあいだの結合が単結合のみで構成された炭化水素のことです。例えばメタンやプロパン、ブタンなどがアルカンに該当します。
以下にその構造式を表しました。

水素の個数に注目してみましょう。メタンに場合は水素が4個で、それから炭素が1個増えるごとに水素が2個増える等差数列であることがわかります。従って、アルカンの分子式は自然数nを用いてCnH2n+2で書き表すことができます。
また、環状構造を持つ場合はアルカンとは呼ばずにシクロアルカンと呼びます。シクロアルカンの具体例も見ておきましょう。

プロパンとシクロプロパンでは分子式の水素の数か異なります。従って、アルカンとシクロアルカンは区別しないといけません。環状構造を取れる炭素数は3個からで、シクロプロパンは水素の数が6個です。
それから炭素が1個増えるごとに水素が2個増える等差数列になっているので、シクロアルカンの分子式は自然数nを用いてCnH2nで書き表すことができます。
これはアルケンの分子式と同じです。すなわち炭素数の同じアルケンとシクロアルケンは構造異性体の関係にあることがわかります。
直鎖アルカン
炭素数20個までのアルカンの名称を以下にまとめました。アルカンを構造式に表したときに炭素骨格が直鎖状のものであれば、この名称を使います。

上の表を見ると、名称の語尾がすべて -ane(-アン)であるのがわかると思います。これはアルカンであることを意味する語尾です。これがアルケンになれば -ylene(-イレン) 、アルキンになれば -yne(-イン)、置換基になれば -yl(-イル)に変更します。
分枝アルカンの命名
アルカンでは炭素数が4以上になると構造異性体が発生して、直鎖状以外にも炭素骨格が枝分かれしたような構造が存在します。直鎖アルカンの名称は上の表に記載しました。ここでは分枝アルカンの命名法を解説します。規則1から順番にしたがって命名しましょう。
規則1:主鎖の命名
分子の中で最長の炭素鎖を見つけ出し、主鎖として命名します。さらに、主鎖に結合している水素以外の原子団を置換基といいます。具体的に下の分子を見てみましょう。

一番長い炭素鎖の取り方が炭素数4の場合なので、主鎖はブタンです。置換基には炭素数1のメタンがあるため、メタンの語尾を -ane(-アン)から -yl(-イル)に変えればメチル基になります。
他にも引っ掛けとしてこんな場合があります。

一番長い炭素鎖の取り方が炭素数9の場合ですね。したがって主鎖はノナンです。このように、最長の炭素鎖が必ずしも直線状になっているとは限らないため注意が必要です。そして、置換基はメチル基とエチル基になります。
最長の炭素鎖の選び方が2通り以上ある場合は、置換基の数がもっとも多くなるような場合を採用してください。
規則2:置換基の命名
主鎖に結合している全ての置換基を命名する。
これについては規則1のところで既に命名しました。ちかんきの炭素数が1個であればメチル基、2個であればエチル基、3個であればプロピル基・・・といったようにアルカンの名称の語尾を -ane(-アン)から -yl(-イル)に変えればOKです。
規則3:主鎖に番号をつける
主鎖を端から順番に炭素原子に番号をつけていきます。このとき、左から番号を振る場合と右から番号を振る場合の2通りがありますが、置換基のついている炭素原子の番号がなるべく小さくなるような場合を採用しましょう。
それでは実際に番号を振ってみます。

左から番号を振ると置換基ついている番号が2ですが、右から振ると3になるため大きくなってしまいます。したがって、番号に小さい左から番号を振る方法を採用します。
左右どちらから読んでも置換基の付いている番号の種類が同じ場合があります。そのときは置換基をアルファベット順に並べて若い方が小さな番号になるように振りましょう。

置換基が何個もある場合は以下のように考えます。まず番号を左右から振って、置換基のある炭素の番号を小さい順に比較していきます。すると番号が異なるときが現れるので小さい方を採用します。

より複雑な分子になると、置換基に置換基がくっついているようなパターンがあります。このような場合には主鎖に付いている置換基の主鎖側から番号を振ることになります。
規則4:アルカンの名称を決定する
アルカンの名称は基本的に
置換基の位置番号+置換基名+主鎖の名称
になります。これまでに例としてあげてきた分子を命名します。




1,4,7-トリメチルオクタンの場合、メチル基が3つあるので接頭辞のトリ(tri)をつけて”トリメチル”になります。2つ重複すればジ(di)、4つ重複すればテトラ(tetra)、5つ重複すればペンタ(penta)を置換基の前に添えます。
置換基に置換基があるような分子だとこんな感じになります。
