今回は不競合阻害(反競合阻害)を酵素反応系に加えた場合の反応速度式を導出していきます。競合阻害とは酵素の基質結合部位に対して阻害剤が競合的に結合することによって酵素反応を阻害するものでした。一方で今回扱う反競合阻害では、酵素だけのときには結合しようとせずに酵素-基質複合体が形成されたときに阻害剤が結合しようとします。反応様式を模式的にみてみましょう。
ここで\(K’_1\)は平衡定数であり、阻害剤Iは酵素基質複合体と結合して平衡状態に達すると仮定します。
$$K’_I=\frac{[ES][I]}{[ESI]}\tag{1}$$
それでは反応速度を求めていきます。
まず、(1)式を[ESI]=の形に変形して、
$$[ESI]=\frac{[ES][I]}{K’_I}\tag{2}$$
定常状態を仮定するためESの正味の生成速度は0になるから、(参考:ミカエリス・メンテンの式を導出)
阻害剤との反応については平衡状態に達してるため、この反応速度は0です。したがって(3)式に[ESI]の項は含まれません。(3)式を[E]について解いて、
また、酵素の全濃度を\([E]_t\)とおけば、
$$[E]_t=[E]+[ES]+[ESI]\tag{5}$$
(5)式に(2)式と(4)式を代入して、
$$[E]_t=\frac{K_M[ES]}{[S]}+[ES]+\frac{[ES][I]}{K’_I}$$
[ES]でくくって、競合阻害と同じように
$$α’=1+\frac{[I]}{K’_I}$$
を定義します。(参考:競合阻害におけるミカエリス・メンテン式を導出) すると(6)式は、
$$[E]_t=[ES](\frac{K_M}{[S]}+α’)\tag{7}$$
いよいよ反応速度式に(7)式を代入して、
$$v_0=k_2[ES]=\frac{k_2[E]_t}{\frac{K_M}{[S]}+α’}$$
反応最大速度は\(V_{max}=k_2[E]_t\)なのでこれを代入して、
$$v_0=k_2[ES]=\frac{V_{max}}{\frac{K_M}{[S]}+α’}$$
分母の分数部分を通分して解消すると、
$$v_0=k_2[ES]=\frac{V_{max}[S]}{K_M+α'[S]}$$
これが不競合阻害のミカエリス・メンテン式です。
逆数を取ってラインウィーバー・バークプロットを考えましょう。
$$\frac{1}{v_0}=(\frac{K_M}{V_{max}})\frac{1}{[S]}+\frac{α’}{V_{max}}$$
不競合阻害のケースにおけるラインウィーバ・ーバークプロット 不競合阻害剤の濃度を上げるとグラフのy切片が大きくなる。阻害剤の濃度を変えてもグラフの傾きは変わらないため競合阻害と不競合阻害を判別することができある。