部分列の定義
もとの数列から一部の項だけを取ってきた数列のことを、部分列といいます。部分列をつくるときには、取ってきた項の順番を入れ替えてはいけません。
ここで、増加写像の「増加」の意味は、\(n < m\)のとき\(\sigma (n) < \sigma (m)\)であるということです。これによって、部分列をつくるときにおける順番の入れ替えがないようにしています。
例えば、部分列\(\{s’_n\}\)の第3項\(s_3\)は、もとの数列\(\{s_n\}\)の第\(\sigma (3)\)項\(s_{\sigma (3)}\)から取ってきたものになります。
集積点の定義
このとき、sを数列\(\{s_n\}\)の集積点という。
2つの定義を紹介したところで、いよいよボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理を証明しましょう。
ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理
証明
数列\(\{s_n\}\)は有界ですから、下限\(A_0 = \sup s_n\)および上限\(B_0 = \inf s_n\)が存在します。そこで、区間\(I_0 = [A_0, B_0]\)をおきます。
\(C_0 = (A_0 + B_0)/2\)として、2つの区間\([A_0, C_0]\)と\([C_0, B_0]\)を考えます。区間\(I_0\)の中に\(\{s_n\}\)のすべての項が収まっているため、少なくとも一方の区間には項が無限に含まれます。項を無限に含む区間の方を\(I_1 = [A_1, B_1]\)とおきましょう。2つの区間がともに項を無限に含む場合は、どちらか一方を選択して\(I_1\)とします。
次に、\(C_1 = (A_1 + B_1)/2\)として、2つの区間\([A_1, C_1]\)と\([C_1, B_1]\)を考えます。区間\(I_1\)の中に\(\{s_n\}\)の無限個の項が収まっているため、少なくとも一方の区間には項が無限に含まれます。項を無限に含む区間の方を\(I_2 = [A_2, B_2]\)とおきましょう。2つの区間がともに項を無限に含む場合は、どちらか一方を選択して\(I_2\)とします。
同様の手順を繰り返していけば、区間の列\(\{I_n\} = \{[A_n, B_n]\}\)が得られます。
この手順により得られた区間列の性質として、\([A_{n+k}, B_{n+k}]\)(\(k\)は自然数)はすべて\([A_n, B_n]\)の中に収まります。
また、\(\{I_n\}\)の区間の長さ\(\{B_n – A_n\}\)は公比\(1/2\)の等比数列ですから、
よって、\(B_n – A_n \to 0 (n \to \infty)\)です。
\(\{A_n\}\)は上に有界なので、\(\alpha = \sup A_n\)が存在します。また、\(\{B_n\}\)は下に有界なので、\(\beta = \inf B_n\)が存在します。
\(\{B_n\}\)の各項が\(\{A_n\}\)の上界であることと、\(\alpha\)が\(\{A_n\}\)の最小上界(上限)であることから、\(\alpha \le B_n\)を得ます。
\(\alpha \le B_n\)であること、\(\alpha\)が\(\{B_n\}\)の下界であること、\(\beta\)が\(\{B_n\}\)の最大下界(下限)であることから、\(\alpha \le \beta\)も得られます。
したがって、
の評価ができます。先に示した\(B_n – A_n \to 0 (n \to \infty)\)とあわせれば、\(\alpha = \beta\)です。
そこで、\(\alpha\)に収束する部分列をつくります。
区間\(I_1\)に入っている数列\(\{s_n\}\)の項を任意に選んで\(s’_1 = s_{\sigma (1)}\)とします。続いて、区間\(I_2\)に入っている\(\{s_n\}\)の項を\(s_{\sigma (1)}\)より後ろの中から選んで、\(s’_2 = s_{\sigma (2)}\)とします。この手順を繰り返していけば、\(s’_n = s_{\sigma (n)}\)を得ます。
\(\alpha (=\beta )\)と\(s’_n\)は区間\(I_n\)に収まっているため、
の評価を得ます。したがって、こうして得られた部分列\(\{s’_n\}\)は\(\alpha\)に収束します。
よって、\(\{s_n\}\)には少なくとも1つの集積点が存在します。
(証明終)