【1変数】収束列の和・差・積・商の数列も収束する

収束する2つ数列の各項の和、差、積、商をとることで得られる数列もまた、それぞれ収束します。

定理(収束列の極限の計算)
2つの収束列が\(s_n \to s\)、\(v_n \to v\)のとき、

$$\lim_{n \to \infty}(s_n \pm v_n) = s \pm v \tag{1}$$
$$\lim_{n \to \infty}(s_n \cdot v_n) = s \cdot v \tag{2}$$
$$\lim_{n \to \infty} \Bigl ( \frac{s_n}{v_n} \Bigr ) = \frac{s}{v} \;\;\; (ただし,v_n \neq 0 かつ v \neq 0) \tag{3}$$

(1)の証明

まずは、三角不等式から以下の評価を得ます。

$$\begin{align} \mid ( s_n + v_n ) \; – \; ( s + v ) \mid &= \; \mid s_n \; – \; s + v_n \; – \; v \; \mid \\ &\le \; \mid s_n \; – \; s \mid + \mid v_n \; – \; v \; \mid \end{align}$$

任意の\(\varepsilon^\prime \! >\! 0\)に対して、\(\varepsilon^\prime \! = \! 2\varepsilon\)となるように\(\varepsilon (> \! 0)\)をとります。すると、数列\(\{s_n\}\)と\(\{v_n\}\)はそれぞれ\(s\)と\(v\)に収束するとの仮定から、

$$\exists N_1 \ge 1\;\;\; \forall n \ge N_1 \;\;\; \mid s_n \; – \; s \mid \: \lt \varepsilon$$

および

$$\exists N_2 \ge 1 \;\;\; \forall n \ge N_2 \;\;\; \mid v_n \; – \; v \mid \; \lt \varepsilon$$

が成り立ちます。そこで、\(N = \max \{ N_1, N_2 \}\)をとれば、任意の\(\varepsilon^\prime\)に対し、すべての自然数\(n \ge N\)において、

$$\begin{align} \mid ( s_n + v_n ) \; – \; ( s + v ) \mid &= \; \mid s_n \; – \; s + v_n \; – \; v \; \mid \\ &\le \; \mid s_n \; – \; s \mid + \mid v_n \; – \; v \; \mid \\ &\lt \; \varepsilon + \varepsilon \\ &= \; \varepsilon^\prime \end{align}$$

が成り立ちます。したがって、\(s_n + v_n \to s + v\)は成り立ちます。

収束列の各項の差についても同様の議論で\(s_n – v_n \to s – v\)の成立が確かめられます。

(2)の証明

数列\(\{v_n\}\)は収束するという仮定から\(\{v_n\}\)は有界であり、すべての自然数\(n\)に対して\(\mid v_n \! \mid \; \le B \)であるような\(B\)をとることができます。

数列\(\{s_nv_n\}\)について、

$$\begin{align} \mid \; s_nv_n \; – \; sv \; \mid &= \; \mid s_nv_n \; – \; sv_n + sv_n \; – \; sv \; \mid \\ &\le \; \mid s_nv_n \; – \; sv_n \mid + \mid sv_n \; – \; sv \; \mid \\ &= \; \mid v_n \mid \cdot \mid s_n \; – \; s \mid + \mid s \mid \cdot \mid v_n \; – \; v \; \mid \\ &\lt \; B \, \varepsilon \; + \mid s \mid \varepsilon \\ &= \; (B \; + \mid s \mid ) \; \varepsilon \\ &= \; \varepsilon ^ \prime \end{align}$$

のように評価することができます。ここで、\( \varepsilon ^ \prime = (B \; + \mid \! s \! \mid ) \; \varepsilon \)とおきました。

逆に、任意の\(\varepsilon ^ \prime \! > \! 0\)に対して上式を満たす\(\varepsilon (> \! 0)\)をおけば、ある自然数\(N\)が存在して\(n \! \ge \! N\)において\(\mid \: s_nv_n \; – \; sv \mid \: < \varepsilon ^ \prime \)が成り立ちます。

したがって、\(s_n \cdot v_n \to s \cdot v\)です。

(3)の証明

まず、\(s_n \! = \! 1\)のときを考えます。

数列\(\{v_n\}\)は収束するため、十分大きな自然数\(n\)に対して\(\mid \: v_n \; – \; v \mid \: \le \: \mid v \mid / \; 2\)が成り立つことから、\(\mid v_n \! \mid \: > \: \mid \! v \! \mid / \; 2 \)となります。

これまでと同様にして、任意の\(\varepsilon ^ \prime \)に対して以下の等式を満たす\(\varepsilon\)をとることができ、十分大きな自然数\(n\)に対して、

$$ \begin{align} \mid \; \frac{s_n}{v_n} \; – \; \frac{s}{v} \; \mid &= \; \mid \frac{1}{v_n} \; – \; \frac{1}{v} \; \mid \\ &= \; \mid \frac{v \; – \; v_n}{v_n v} \; \mid \\ &= \frac{\mid \; v \; – \; v_n \; \mid}{\mid \; v_n \mid \cdot \mid v \; \mid} \\ &\lt \frac{2 \mid v_n \; – \; v \; \mid}{ \mid \; v \mid \cdot \mid v \; \mid} \\ &\lt \frac{2\varepsilon}{{\mid \; v \; \mid}^2} \\ &= \; \varepsilon ^ \prime \end{align}$$

の評価が得られるため、\(1/v_n \to 1/v\)が成り立ちます。

そこで、\(s_n/v_n\)の極限を\(s_n \cdot 1/v_n\)の極限とみなせば、(2)の積の極限に帰着することができて\(s_n/v_n = s_n \cdot 1/v_n \to s \cdot 1/v = s/v\)が成立します。

(証明終)