二分子原子はバネでつながれた二つの質点がなす系として近似することができます。今回はこのモデル、いわゆる二体問題について運動方程式を立てることから始めて質量中心座標(重心座標)を導入し、相対座標と換算質量を用いた方程式の単純化についても触れていきます。
バネでつながれた二つの質点
質量がそれぞれ\(m_1\)と\(m_2\)の2つの質点がバネでつながれていて、座標がそれぞれ\(x_1\)と\(x_2\)である場合を考えましょう(ただし、\(x_1<x_2\))。図に表すと以下のような感じです。

このとき、重力や摩擦などの外力は働かずにバネの復元力のみが作用していると仮定します。
すると、バネの自然長を\(l_0\)、バネ定数を\(k\)としてニュートンの運動方程式を各質点について立てれば、
$$m_1\frac{d^2x_1}{dt^2}=k(x_2-x_1-l_0) \tag{1}$$
となります。\(m_1\)の運動方程式はバネの変位の正だと復元力も正ですが、\(m_2\)の方は変位が正だと復元力は負の値をとるためマイナスの符号が右辺にかけられています。
(1)式と(2)式を辺々足し合わせて、
$$m_1\frac{d^2x_1}{dt^2}+m_2\frac{d^2x_2}{dt^2}=0 \tag{3}$$
さらに\(m_1\)と\(m_2\)を微分の中に入れれば、
$$\frac{d^2}{dt^2}(m_1x_1+m_2x_2)=0 \tag{4}$$
に式変形することができます。
ところで、これら2つの質点の重心座標(質量中心座標)\(X\)を求めると、
$$X=\frac{m_1x_1+m_2x_2}{m_1+m_2} \tag{5}$$
分母を払って、
これを(4)式に代入すれば、
$$\frac{d^2}{dt^2}(m_1+m_2)X=0 \tag{7}$$
\(m_1+m_2\)を微分の外に出して、
$$(m_1+m_2)\frac{d^2}{dt^2}X=0 \tag{8}$$
\(M=m1+m_2\)とおけば、
$$M\frac{d^2}{dt^2}X=0 \tag{9}$$
となって、重心座標で考えたときの運動方程式は右辺が\(0\)であるため外力が働いていないことになります。したがって重心の加速度は\(0\)で等速直線運動をすることがわかります。
次に、運動方程式(1)(2)を相対座標によって記述し直してみましょう。相対座標\(x\)を、
$$x=x_2-x_1-l_0 \tag{10}$$
すなわち質点\(m_1\)から見た質点\(m_2\)の相対座標を計算した時のバネの自然長からの変位を\(x\)とおいています。
(1)式と(2)式の両辺をそれぞれ\(m_1\)と\(m_2\)で割って、
(12)式から(11)式を引いて、
同類項でまとめて、
ここで、
となる\(\mu\)をおきます。これを換算質量と呼びます。(15)式を(14)式に代入して換算質量\(\mu\)で表せば、
左辺の微分を1つにまとめて、
さらに相対座標(10)式を代入して、
$$\frac{d^2}{dt^2}(x+l_0)=-\frac{k}{\mu}x \tag{18}$$
左辺の\(l_0\)は定数なので微分すれば\(0\)になるので決して、両辺を\(\mu\)倍すれば、
$$\mu \frac{d^2x}{dt^2}=-kx \tag{19}$$
にまで式変形することができて、質量\(\mu\)の質点がバネにつながっていて変位が\(x\)であるときの運動方程式とみなせます。このように、相対座標\(x\)と換算質量\(\mu\)をおくことで2つの運動方程式(1)(2)を(19)式としてシンプルに書き表すことができるのです。